心理療法の世界では、移住によるストレスや不安は、“トラウマ”として認知されています。もし今あなたが苦しい思いをされていたら、それは別にあなたが弱いからではありません!
今のグローバル社会にあって、“海外に住む”ことは結構普通のことになってきています。“誰もが普通にしている移住なのに、こんな葛藤のある自分は、どこかおかしいんじゃないだろうか?” と、昔のわたしは、こんなことが時々頭をよぎっていました。
実は、移住によって起こるストレスや不安は、自分自身を根底から揺るがすような体験なのです。その主なものを3つ挙げます。
1.自己表現できないストレス
「自己表現を求める衝動」は、誰もが心の中に持つ衝動です。最も手軽な自己表現は、おしゃべりでしょう。自己表現の衝動は、自分らしさをつくりあげ、毎日楽しく過ごすことに深くつながっています。
言葉や文化の壁があることで、自分をうまく伝えられないもどかしさを感じたり、話が分からないと焦ったりすることは日常茶飯事ですね。それが、いつしか劣等感になっていったり、「ありのままの自分では価値がない」と感じるようになったりすることがあります。
また、海外にいると、就ける仕事も限られてくるので、自分の能力を思う存分発揮できないことも、自己表現できない苦しさにつながっています。
自分を自由に表現できないということは、言いたいことがうまく言えない、ということです。言いたいことが言えず、気持ちを押し殺していると、自分が何を考え、感じているのか、どんどん分からなくなっていきます。
2.つながり感が激減したストレス
うまく話せず、言っていることもよく分からないと、実際、人との会話に入っていけなかったり、会話がすぐ途切れるなどして、親密な対人関係を築くことが難しいことも現実です。わたしたち日本人は、他人とのつながりの中で自己の存在を感じ、それが自己肯定感につながっているので、人とのつながりを感じられないことは、大きなストレスになります。
日本にいる時は、サポートしてくれる家族や友人が周りにいるから良いですが、移住という困難な環境の中で、すでにサポートネットワークが限られ、その上、言葉の壁から人とのつながりが希薄になることで、うつを引き起こしやすい。
3.自己の存在価値感が激減したストレス
“自分を表現できない” “人とつながれない”-このストレスは、自分自身の存在価値を根底から揺るがすものです。わたし自身は、うまく人と会話できなかったり、自分の思いを伝えられないことで、いつの間に、「自分は力不足で、必要とされていない人間だ」と感じるようになっていったのを覚えています。周りから、ダメで役立たずと思われる怖さから、だんだんと自分を出せなくなっていきました。自分の価値を感じられないと、人間どんどん縮こまっていってしまうものです。
心の痛みはストレスが高くなると現れる
カウンセラーをしていてよく見受けられるのは、海外生活というストレスの高い状態にいると、それまで潜伏していた心の痛みがうずき出すことがある、ということです。
移住には自分でも気づかないような、激しいストレスが伴います。そうすると、ずっと心にあった怒り、寂しさ、愛情欲求が表面化することがあるのです。それを癒して手放すまでは、人生で同じように苦しむことが何度も起きてきます。
わたしたちの心にある痛みや傷を癒して手放し、人生を変えるための方法として、カウンセリング(心理療法)等があります。自分の心と向き合うのは、勇気がいりますが、いつでもお気軽に、ご相談くださいね。
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